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『むかしばなし』データベースから【泥棒が金を盗んで隠したのをとった話】を表示 登録件数30中1件
泥棒が金を盗んで隠したのをとった話川東のおはなし(挿絵はありません)

昔、多喜浜の塩田土手を半月の夜ある男が家路へ急いでいた。
 行く手に人の気配を感じて土手より降りうかがった。人は2人だった。こそこそ話をしている。話の様子ではどうもどこからかお金を盗んで来て処分を相談しているらしい。話がまとまったのか土手の中ごろの土を掘り、盗んで来たお金を埋め、「来年の今夜2人がここで落ち合って埋めたお金を掘り出し分けようではないか。」といって2人の泥棒はつかまらないよう東西に別れて立ち去った(土手の下で2人の話や、行為を見ている人がいたということを夢にも思わず)。
 泥棒の2人が東西に分かれて立ち去ってから今の時間で1時間余りもその男はじっとしていた。もう泥棒がひきかえす様子がないのでその男は四方を確かめつつすばやく泥棒が埋めたお金を掘り出し、掘り起こしたことがわからないように土をならして、自分の家へ大金を持って帰り、ぼろに包んで物置の隅に隠しておいた。お金はちょっとも使わずそのままにして・・・・・。 
 ちょうど1年たって約束の日に2人の泥棒が約束の時刻に落ち合い、隠した所を掘り起こしたがお金がない。お互い相手を疑ったりしたが話をしているうち誰かに盗まれたらしいということに気付き、もうあきらめるよりしかたがないと思い、2人の泥棒はすごすごと立ち去ろうとした。が、1人の泥棒は、「よしどうしても捜し出してやろう。」と心にきめ、いろいろ聞き込みをした。ちかぢか家を建てた人はいないか。田畑を買った人はいないか。くらし向きがよくなった家はないか等々、けれどそんな人は見あたらない。
 泥棒のお金を盗った男は2年ほど月日がたって少しずつ使いかけた。この男は賢くて小さな商売を始めた。儲けを少なくして商売をしたので「あの店の品物は安い」と評判になり他地域からも買いに来るようになり店が繁昌した。
 泥俸の1人が3年目にまた多喜浜へ来てまた聞き込みをした。が怪しいことは何ひとつわからないで立ち去った。次の年、即ち4年目にまたもやって来て聞き込みをしてどうもこの商売を始めた男は怪しいと睨んで、商売をしている家にやって来て一夜の宿泊を求めた。
 店の主人は気持ちよく宿泊をさせ手厚くもてなした。そして夜半まで語った。夜半すぎ店の主人は、「私を知っていて来たんかの?」といい出した。泥棒はびっくりした様子をして、「もうすんだことだ、何にもいいたくない、聞きたくもない。」といった。
 翌朝店の主人は早く起きて垣生の魚市場に行ってタイを3枚買った。そしてタイの料理をして旅の男(泥棒のこと。)を丁重にもてなした。
 旅の男は満足して、商売をしている店の主人に、「もうすんだことだ、何にもいわん。けれど私は年に1度タイ時分にやって来るから、気持ちよく泊めてほしい。」といって立ち去った。その男はそれから毎年5月のムギが色づく頃やって来て一泊して帰るようになった。
 旅人が来ると商売をしている男が垣生の魚市場で大きなタイを買った。
 そのことが垣生を中心に評判になった。商売を始めた男は、まじめに働き後に立派な家を建て、今でいう福祉にも金を出して地域の人の信用を得て人望家となって一生を送った。
 (宇摩郡土居町篠永明さんの話の要約)
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