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『むかしばなし』データベースから【一宮の小女郎狸】を表示 登録件数30中1件
一宮の小女郎狸川西のおはなし(イラスト:藤田美保)

挿絵
昔、立川の奥の小女郎谷に1匹のタヌキがいて、夕方になると美しい娘に化けるので、人々は小女郎狸と呼んでいた。
 小女郎狸は神通力をもっていたので、一宮神社の神さまに見込まれて、眷属(お使いもの)として抱えられ、一宮の森に移ってきた。平素はおとなしく神主さまのいいつけを守り、お気に入りになってかわいがられていた。
 ある夏、1人の漁師が1匹の初タイを奉納した。神主はお供えしたサカナを台所に置いていった。これをクスの木のほこらにいた小女郎狸が、神主のいない間に取って食べた。夕方になって神主が知り、たいへん立腹して、「タイなど盗むような奴は眷属の資格がないから、今日かぎり一宮の森から追放する。」と追い出された。 
 困った小女郎狸は、慈眼寺の和尚に化け「大阪に行きたいのだが、この船に便乗させてほしい。」と船頭にのせてもらった。
 何日もの船旅で、腹のへった小女郎狸は、積荷のタイをごちそうになった。船頭に正体を見破られ、おわびをし「私は、一宮の森の小女郎狸です。神主さんに追い出され、大阪へ行く途中また悪いことをしました。罪ほろぼしに、黄金の茶釜に化けて損を取り返します。」と、茶釜に化けて、古道具屋に高く買ってもらった。
 道具屋は、金の茶釜を大切にしていたが、ある日、よくよく見ようと、えんがわへもち出したときに、茶釜を取り落とした。庭の隅に落ちたはずなのにどうしてもみえなくなってしまった。
 小女郎は、日の暮れるのを待って、きれいな娘に化けて庭から抜け出し、大阪の町を道頓堀、千日前と歩いた。道行く人は、「なんて、きれいな嬢はんやこと。」「ほんま、どこの娘はんでっしゃろ。」と立ち止まり、振り返って見るので、木をよくした小女郎は夜中まで歩きまわったが、行き先がない身で、友達のいるしのだの森を訪ね、長くその森に住むことになった。
 小女郎もでるとよ今日の神迎    樟坡
 (庄内   伊予時の歴史と伝説・愛媛の伝説   合田正良 抜粋)
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