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(質問)
○次の質問に移らせていただきます。
次に、カーボン・クレジット市場に向けた取組について質問させていただきます。
昨年、東京証券取引所では、経済産業省から委託を受けて、9月から5か月間、カーボン・クレジット市場の実証事業を行いました。実証事業では、5か月間で売り注文が220件、買い注文が342件あって、約定件数は163件となり、14万8,933トン分の二酸化炭素が取引され、売買代金は3億2,800万円となりました。つまり二酸化炭素1トンの吸収量が2,000円強で取引されたことになります。
しかし、クレジットの種別ごとで見ると、省エネなどによるクレジット1トン当たりの平均販売価格は1,431円、再生エネルギー発電によるクレジット販売価格は1トン当たり平均して2,953円でしたが、森林によるクレジット販売価格は1トン当たり平均して1万4,571円と高値での販売価格となりました。
東京証券取引所では、10月から本格的にカーボン・クレジット市場を開設し、売買を始めようと現在参加企業や地方公共団体などを募集しています。カーボンニュートラルの意識が、今以上に高まり、参加企業が増えてくると、二酸化炭素を吸収する1トン当たりの売買金額も上がってくると思われます。
また、市場による取引だけではなく、既に環境省と経済産業省、農林水産省の3省協働によるJ-クレジット制度を活用して二酸化炭素などの排出削減や吸収量を創出できる側とカーボンオフセットを行いたい企業などとの間でカーボン・クレジットを取引するプロジェクトを国の認証によって行っています。そこでの取引金額は、森林吸収で二酸化炭素1トン当たり1万円から1万5,000円で売買されています。例えば、岩手県では、2010年から岩手県有林のカーボン・クレジットの販売を始めており、昨年度の1年間だけでも93件の販売実績があり、約892トンの吸収量を販売しています。1トン当たりの販売価格は1万5,000円ですから、約1,338万円に上ります。
そこで、お聞きいたします。
新居浜市においても市有林を保有していますが、J-クレジットへの取組はどのようにお考えか、御所見を教えてください。
仮に、J-クレジット制度を利用するとしたときに、克服しなければならない課題があればお聞かせください。
また、新居浜市が所有する市有林の面積と樹木の種類と割合を教えてください。
林野庁が公表している目安では、杉の木の人工林であれば1ヘクタール当たり1年間に吸収する二酸化炭素の量は約8.8トンと推定しています。新居浜市の市有林をJ-クレジットに換算すると、何トンの吸収量が推定され、幾ら程の金額が生まれる可能性があるのか、お教えください。
(市長答弁)
○市長(石川勝行)(登壇) カーボン・クレジットの市場に向けた取組についてお答えをいたします。
国におきましては、2050年までの脱炭素社会の実現に向け、環境、経済、社会の統合的向上及び国民をはじめとした関係者の密接な連携等により、地球温暖化対策を推進することとされております。
市におきましても、自然的・社会的特性と現状を踏まえ、これまでの取組を充実し、2050年度までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとするゼロカーボンシティーに向け、令和3年3月に新居浜市地球温暖化対策地域計画を策定いたしております。本計画では、森林は温室効果ガスの吸収源としての機能に加え、水源涵養などの多面的な機能を備えておりますことから、森林の適正な管理を進めることといたしております。
市有林を活用したJ-クレジットへの取組につきましては、クレジット取引により、市内外企業への温室効果ガスの排出抑制に寄与するとともに、地球温暖化対策への市としてのPR効果も期待できますことから、大変有意義な取組であると認識いたしております。
そうした中、今年度クレジットの取引実績を有する企業から、別子山地区市有林の活用についての提案を受け、提案内容を精査する中で、市有林へのJ-クレジット導入については、クレジットの認証に時間やコストを要すること、クレジットの売却が進まない場合が想定されることなど実施に向けた課題がございます。
しかしながら、別子山地区の一部につきましては、既に森林経営計画の策定や国土調査も完了しておりますことから、市有林の間伐実施地域へのJ-クレジット制度活用に向け、前向きに検討してまいりたいと考えております。
次に、本市市有林の面積等についてでございます。
市有林は約4,800ヘクタールで、主な樹種及び割合は、ヒノキが約40%、杉及び松がそれぞれ約10%、その他の樹種が約40%となっております。
また、仮に全市有林をクレジット対象とすることができた場合の温室効果ガスの吸収量は、推定で年間1万9,200トンであり、国が実施した市場実証期間の森林平均価格1トン当たり1万4,571円で換算いたしますと、約2億8,000万円分のクレジットが創出できると推定いたしております。
(再質問)
○13番(伊藤嘉秀)(登壇) 御答弁ありがとうございます。
大変たくさんの二酸化炭素の吸収量があると見込まれるという御答弁でありましたけども、私は新居浜市が所有するこの市有林のJ-クレジット化によって、新たな財源が生み出される、またその財源によって、山間部の整備費用や別子山地区を中心とした雇用の創出にもつなげることができるんではないかというふうに考えます。
また、クレジットを売り出す立場で考えると、証券取引所による市場に売り出すと高値がついて歳入額が増える可能性がありますが、購入する企業の立場で考えると、カーボンオフセットを実行したい企業は、高値でクレジットを購入することは、経営を圧迫する原因となりますので、当然安いほうがいいわけです。つまり、地元企業の中小零細企業にとっては、燃料高、電気代高騰の中で、大手企業の下請としての立場を守ったり、消費者へのPRを考えると、苦しい中にもカーボンニュートラルへの取組が喫緊の課題となっていますから、市行政から地元企業に限った低コストのクレジットが提供されると大きな励みにもなります。
今後、J-クレジット制度は、市場の取引とこれまでどおりの売手と買手が直接売買をするものと2つの取引方法を維持するようでありますので、新居浜市の市有林から生まれてくる二酸化炭素吸収分の扱いについては、今後どのような扱いをされるか、お聞かせいただけたらと思います。つまり、市場へ出していくようなカーボンニュートラル、それと地元企業を守るために地元への企業への配分といったようなことが考えられると思うんですが、そのような取扱いについて御所見をお聞かせください。
(市長答弁)
○市長(石川勝行)(登壇) 伊藤嘉秀議員さんの御質問にお答えいたします。
クレジットの区分化というふうなお話かと思いますが、まずこのクレジット制度の創設ができるかどうかについて、これから検討をしていかなければならないと。と申しますのも、先ほど申しましたように、森林そのものを適切に管理していくための経費も必要です。また、クレジット制度を創設するための調査等も必要でございます。それに見合うクレジットが確保できるかどうか、そこら辺の費用対効果を十分検討した上で、その制度を創設する必要があると思います。それでもし仮に創設できたとした場合には、議員がおっしゃるとおり、市場に提供するものとそうでない市内の業者を対象とするものと、そういうふうな区分をすることも一つの方法かと考えております。
(再質問)
○13番(伊藤嘉秀)(登壇) ありがとうございます。
地元企業におきましては、カーボンオフセットできれば、海外との取引のときにまた有力な力になるというようなことを考えられる方もいらっしゃいます。そういった上で、早急に調査研究を進めていただき、できる限りJ-クレジットの利用を御検討いただければというふうに思います。