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(質問)
○13番(伊藤嘉秀)(登壇) 皆様こんにちは。自民クラブの伊藤嘉秀でございます。
通告に従いまして質問に入らせていただきますが、初めに、能登半島地震におきまして、犠牲となられました方々の御冥福と被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
2か月がたった現在もインフラの復旧が思うように進んでいない状況や仮設住宅の設置戸数もまだまだ足りない状況にあります。こういった状況を踏まえて、本議会では、災害に関連した内容を中心に質問させていただきます。
初めに、小中学生が学ぶ事前復興教育についてお伺いいたします。
愛媛大学では、平成18年に防災情報研究センターを設立し、予想される様々な自然災害から住民の生命と財産を守る防災研究に取り組んでいただいております。近年では、愛媛大学の山本浩司先生と東京大学の羽藤英二先生が、宇和海沿岸の5つの市町と愛媛県とともに、南海トラフ地震事前復興共同研究に取り組み、令和3年3月に南海トラフ地震えひめ事前復興推進指針を発表されました。この研究では、まちづくりと人づくりを骨格にしていて、人づくりでは、研究対象を行政職員グループそして住民グループと小中高生のグループといった3分類に分けて研究を進めています。小中高生を対象にした理由は、南海トラフ地震の周期を踏まえると、襲来時に当事者となる可能性が最も高い世代、それが今の小中高生世代であると考えています。その上で、将来南海トラフ地震が襲来したときに、被災地域を担う責任世代として、被災当事者になることがほぼ確実な現在の小中高生世代が、事前に防災と復興の概念を学ぶこと、つまり命を守ることを主眼にした防災学習に加えて、大災害への備えと失われたまちの復興についての教育プログラムを小中学生から高校生まで連続して学習することを継続できるように構築することが、大災害に立ち向かう強い人づくりになると説いています。
この指針を受けて、宇和島市では、令和5年度から市内の小学校28校と中学校6校において、宇和島市防災事前復興教育プロジェクトを実施しています。
小学生の授業では、これまでに防災教育として行われている、行政が公表しているハザードマップの上に、自分たちが歩いて調べた危険箇所を重ねて、自分たちの地域のマップを作成する学習だけではなく、1時限目で防災推進アドバイザーから、命を守るための解説を受け、2時限目では、建設コンサルタントの若手技術者から、児童たちが暮らすまちを知る、まちをつくることを知る、自分たちの地域で過去に発生した災害を知るといった内容のオリエンテーションを受け、3時限目から5時限目までは、教員が担当して、まちの大切なものを考える、まちの大切なものを守る方法を考えるへと授業が展開していきます。
中学生になると、若手の建設技術者から、1時限目、まちの成り立ちを知る。2時限目に大災害と復興について知る内容を学習し、3時限目からは担当の教員が、今のまちを知り、災害を想像する。復興するまちの姿を考えるについて授業を行います。この事前復興教育は、現在各高校の防災地理部に引き継がれ、実践的な学習として活動されています。その内容は、最近の報道でも目にするようになりました。
私は、事前復興教育の指針や報道を見ましたときに、新居浜市で2004年に発生した前線と連続する台風による豪雨災害を考えました。あれからちょうど20年が経過しました。当時小学生であった子供たちは、現在20代後半から30歳代となり、今災害が発生すれば、本人の命を守る行動は当然ですが、安全確保ができれば、被災者救助、まちの復興を中心になって担う世代になっています。こうしたことを考えると、今の小中学生を対象にした教育プログラムの中に、これまで学習していた防災・減災教育から一歩踏み込んだ事前復興教育の発想を組み込む必要があると考えます。将来、災害が発生したとき、自分たちが生活の再建、まちの復興に関わる人として、自らが置かれている立場から復興に携わることのできる人材育成が必要ではないかと考えます。
そこでお伺いいたします。
現在、新居浜市の小中学校において行われている防災・減災教育の内容を教えてください。
また、新居浜市防災マップには、2004年の浸水範囲や今後起こる可能性の警戒区域などを記入されていますが、授業の中で危機管理課からの視点に立った地域の説明や土木や地理のプロからの防災授業は行っているでしょうか。
さらに、本市における災害時の人命救助、復興作業について学べる授業がされているでしょうか。
近い将来、新居浜の子供たちが、被災当事者となって人命救助、まちの復興に取り組むことを考慮して、新居浜市においても事前復興教育を教育委員会から手がけて、小中学校全校で実施する必要があると考えますが、御所見をお聞かせください。
(教育長答弁)
○教育長(高橋良光)(登壇) 伊藤嘉秀議員さんの御質問にお答えいたします。
小中学生が学ぶ事前復興教育についてでございます。
まず、本市の小中学校における防災・減災教育についてでございます。
本市では、平成16年の豪雨災害や近年全国で発生している大規模災害を教訓といたしまして、市内全小中学校の各学年で、年間10時間以上の防災教育を実施しており、毎学期行う避難訓練のほか、児童生徒の発達段階に応じた教育活動を計画し、防災学習を積み重ねております。
小学校におきましては、総合的な学習の時間に、防災、減災に関するテーマに沿って取り組んでおり、家庭や学校、地域での聞き取りや災害への備え等の調査、体験学習、講師による出前授業、防災センターの見学などを実施するとともに、ハザードマップを活用し、想定される災害について学んだり、身の回りの危険や安全な場所の確認、過去の災害を調査するなど、身近な地域の防災マップを作成し、学習しております。
中学校におきましては、ハザードマップを活用した学習に加え、地域と連携した防災訓練等を実施しております。
次に、防災対策の専門家による授業についてでございます。
各学校での防災授業につきましては、危機管理課職員や新居浜防災士ネットワーク、地域の防災士による出前授業や愛媛県が実施するえひめ川の防災プログラム及び砂防学習会を活用した授業や体験学習を行っております。
次に、災害時の人命救助、復興作業について学べる授業についてでございます。
小学校や中学校では、救助体験を実施する学校は多くございますが、児童生徒は、自分の地域にどのような災害が起こり得るのかを学びの出発点とし、以後の学びを重ねております。その過程において、減災の意識を持ちながら、災害への備えや他者との協力、復興作業などについて必然的に学んでいるところでございます。
次に、事前復興教育の全小中学校での実施についてでございます。
事前復興教育につきましては、本市全体における事前復興計画の取組にも関連しますことから、現在のところ、計画しておりません。
しかしながら、地域とともにある学校が、地域との結びつきを大切にし、継続して学習を進めることを通して、当事者としての意識や知識、技能を高めることが重要であると考えておりますことから、自分や身近な人たちの命を守る防災・減災教育だけではなく、復興にもつながる教育を確実に積み重ねてまいります。
(再質問)
○13番(伊藤嘉秀)(登壇) ありがとうございます。
これまで以上に復興につながる教育を積み重ねていくという御答弁をいただきました。ありがとうございます。
毎日の報道で流れてくる能登半島の状況を見ていましたら、復興というのは大変な労力が要るというのがよく分かります。体力、気力が必要ですし、また仮設住宅や自宅を建て直そうとしても、どこに液状化が起こるのかとか、そういった知識、また津波がどういうふうに入ってきたのかといった、そういう知識も必要ではないかなというふうに思います。そういった意味で、復興教育というのは大切なんではないかなというふうに考えておりますので、ぜひこれからの学校の中で、地域の中でどういった災害が起こっているのか、これまでどういう経験をしたのかといったような歴史も踏まえて、教育をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。