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(質問)
○9番(黒田真徳)(登壇) 皆様こんにちは。
公明党議員団の黒田です。
石川市長の3期目の任期も残り半年を切りました。3期目はコロナ禍の対応に追われ、実行に移せなかった施策もあるのではないかと考えられますが、3期間の総仕上げに辣腕を振るわれ、見事な引き際であったとなるよう、御期待いたします。
それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。
初めに、フューチャーデザインの活用についてお伺いします。
フューチャーデザインとは、政策形成に当たり、現代に生きる人々のみならず、まだ生まれていない将来に生きる人々をも利害関係者として捉え、仮想将来世代と現代世代の双方の視点を持って考えることで解決方法を見いだすものです。従来のように、現在の視点からの評価だけでは、既存計画や政策が未来社会に及ぼす影響を適切に評価できない可能性があります。また、現在の視点の延長では、方針転換を要するような本質的な課題の顕在化や改善案の提起も容易ではありません。フューチャーデザインの仮想将来世代といった新しい仕組みを導入することで、より長期的視点から潜在的課題やリスク、未来の価値やニーズを捉え、現世代と将来世代を俯瞰した観点から、政策評価や持続可能性を高めるための対策も見えてくると考えられます。
少子高齢化や人口減少が進む私たちの地域において、フューチャーデザイン手法を取り入れ、行政サービス、産業や農業、子育てや介護など持続可能な未来への多様な課題に対応するために、現在の延長ではなく、抜本的かつ独創的な施策の展開が必要と考えます。同手法を活用することにより、近視眼的な判断や意思決定ではなく、現世代と将来世代の双方の利益を考慮した意思決定を促し、具体的かつ創造的な将来像を示すことができます。
一方、バックキャストは、その将来像から逆算して、現時点での必要な行動や戦略を考える手法であり、この手法を活用することで、現時点から将来に向けての具体的な行動計画を立てることができます。
そこで、このようにフューチャーデザイン手法により、将来の目標やビジョンへの関係者間の合意を形成した上で、その将来像から逆算して、現時点での必要な行動や戦略を考えるバックキャストで、持続可能なまちづくりに向けて、具体的で効果的な行動計画を策定することは、大変に有意義であると考えますが、見解をお聞かせください。
2点目に、フューチャーデザイン手法を政策立案に取り入れるための組織の整備についてお伺いします。
町の将来ビジョンづくりに住民参加の仕組みを取り入れている岩手県の矢巾町では、自治体として初めてフューチャーデザインの手法を取り入れ、行政課題について約6か月にわたる討議を行いました。町民が現世代と仮想将来世代グループに分かれ課題を検討した結果、仮想将来世代グループからは、地域の様々な資源や町の長所を有効に活用することで、新たな地域の創造につながる様々な提案が出されました。仮想将来世代グループの討議には、矢巾町の持続可能な未来をつくるために、現在の延長ではなく、抜本的かつ創造的な施策を提案する傾向が見られたとのことでした。最終的に合意形成セッションにおきましては、現世代グループが、仮想将来世代グループが提起するアイデアに理解を示し、もともと仮想将来世代グループが提案した施策が、半数以上取り入れられる結果となったとのことです。このフューチャーデザイン手法を導入することで、参加者の将来のリスクへの認知や将来の地域の目標に対する意識の共有が図られると同時に、現行計画の評価や改善への視点も磨かれます。この結果を受けて、矢巾町は、同手法を行政活動や政策立案に取り入れるための機構として、役場に未来戦略室を設置し、2023年には未来戦略課へと格上げいたしました。
そこで、このように町ぐるみで同手法を政策立案に取り入れるための組織を整備し、様々な行政課題の行き詰まりの打開を目指すことも大変に重要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
令和5年度に改定されました本市の立地適正化計画の中に、立地適正化計画で目指す多極ネットワーク型コンパクトシティとは、医療・福祉施設、商業施設や住宅などがまとまって立地し、あるいは高齢者をはじめとする住民が、自家用車に過度に頼ることなく、公共交通により医療・福祉施設や商業施設などにアクセスできるなど、日常生活に必要なサービスや行政サービスが住まいなどの身近に存在する都市とあります。この中で、高齢者が各種サービスを受けやすい利便性の高い場所での住宅の集約化につきまして、将来の新居浜市像から現在行うべきことについてどのように考えられますか、お伺いいたします。
(市長答弁)
○市長(石川勝行)(登壇) 黒田議員さんの御質問にお答えをいたします。
フューチャーデザインの活用についてでございます。
まず、フューチャーデザイン手法についての見解についてお答えをいたします。
フューチャーデザイン手法につきましては、様々な行政課題を議論する上で、現役世代だけではなく、その課題の影響が及ぶ将来世代の立場も踏まえて議論を行う取組であり、長期的な視点に立った政策立案等を進める際の有効な手法であると認識をいたしております。
また、いや応なく進む人口減少や少子高齢化など、今後の社会経済環境の大きな変化が予想される中、政策決定において、将来世代の視点や将来にわたる負担を踏まえた議論は欠かすことのできないポイントになるものと考えております。
こうしたことから、来年度予定いたしております第六次長期総合計画の中間見直し作業をはじめ、今後様々な行政計画の策定、見直しを行う際には、御紹介いただいた手法等も参考にさせていただき、将来世代に過度な負担を残さず、現役世代、将来世代が共に望む真に必要な政策となるよう十分検討を進めてまいります。
次に、フューチャーデザイン手法を政策立案に取り入れるための組織整備についてでございます。
本市が策定する長期的な計画及びビジョンを所管する課所が多岐にわたりますことから、同手法に特化した一元的組織整備につきましては、現時点で検討をいたしておりませんが、将来の地域像を踏まえた政策議論は、今後の行政運営においてなくてはならない視点だと捉えております。
このようなことから、現在検討している大型プロジェクトや新たな政策を立案する部署として、昨年度企画部内に設置した政策推進室において本市が抱える多様な課題の解決に向け、将来あるべき地域社会の実現という観点を踏まえた政策立案を進めてまいります。
次に、高齢者が各種サービスを受けやすい利便性の高い場所での住宅の集約化についてでございます。
本市では、平成31年に公表した立地適正化計画を令和5年度に改定し、人口減少、少子高齢化社会が進行していく中、将来の都市像を踏まえ、都市拠点周辺に医療、福祉、商業などの利便性の高い都市機能の集約や住居を誘導することで、地域の活力の維持・向上を図り、持続可能なコンパクトなまちづくりの形成を推進しているところでございます。
高齢者が各種サービスを受けやすい利便性の高い場所での居住につきましては、高齢者だけでなく、次世代へとつながる若者、子育て世代を含めた幅広い層の方々を都市拠点周辺の利便性の高い場所へ緩やかに誘導する必要があると考えております。
さらに、各拠点間を結ぶことで、構築される多極ネットワーク型コンパクトシティには、ニーズに対応した公共交通ネットワークを充実させることも大変重要であると考えておりますことから、交通施策との連携強化を図りながら、コンパクトなまちづくりを推進してまいりたいと考えております。
(再質問)
○9番(黒田真徳)(登壇) ありがとうございます。このフューチャーデザインの考え方を初めて目にしたときには、将来世代のことを考えて、現在の政策を進めるのは、当たり前のことではないかと感じ、既に実践されていることではないかと考えましたが、フューチャーデザインについての研究、取組実践例などを確認させていただきますと、現在の取組に口を出すことができない将来世代についてより具体的に仮の将来世代を立てて議論することが、現在の取組の課題を顕在化し、よりよい方向への修正につながっておりました。
矢巾町の事例では、2060年にタイムスリップしたという設定の仮想将来世代グループの住民の提案が政策に反映したという事例もあります。
また、ほかの様々な自治体においても、フューチャーデザインの実践が行われ、仮想将来世代の仕組みを導入した政策分野における実践例は、都市計画、環境計画、業務改善や働き方改革、カーボンニュートラル政策、再生エネルギー導入問題、水環境問題など多様な稼働領域に及びます。現在の少子高齢化の状況では、各種事業につきまして広域連携や縮小、統合を余儀なくされるものも多くありますが、このフューチャーデザインの活用などにより、無駄のない施策実施で、市民にとって必要なサービスが縮小とならないようによろしくお願いいたします。