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(質問)
○ それでは続きまして、聞こえの補助についてお伺いいたします。
近年、高齢者の定義を変えるというお話を耳にします。2023年7月更新の厚生労働省健康情報サイトでの青山学院大学の佐藤特任教授のお話では、何歳以上を高齢者と呼ぶかは、時代や地域によって異なりますが、現在世界保健機関では65歳以上を高齢者としております。日本では、行政上の目的によって異なり、改正道路交通法では、70歳以上を高齢者として、高齢者講習の受講や高齢運転者標識の表示を課しております。その一方、高齢者の医療の確保に関する法律では、65歳以上を高齢者とした上で、65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分けて定義しております。この法律が制定された昭和57年時点では、65歳以上の高齢者の割合は10%に満たなかったのですが、令和4年には30%まで上昇しております。また、この間に平均寿命は男女とも7歳以上延びていることから、これまでと同様、65歳以上を高齢者とすることについては、議論が起きつつありますとありました。
このような動きからも、活躍が期待される、活躍が必要とされる年代の高年齢化が進んでいると考えられます。ただ、そのような世代の方の活動、活躍を妨げる要因の一つに難聴があります。聴力が落ちてくると、各種会合に参加したくても、人の話が聞き取れないため楽しくないことから欠席するなどのお声があります。また、高齢者は、加齢による難聴を受入れにくい傾向があり、自分は普通に聞こえている。ほかの人がちゃんと話してくれればと考える傾向があり、同居家族など周囲の人が最初に難聴に気づくケースも多いそうです。そして、認知機能の低下がある高齢者の場合も、話しかけに対する反応が鈍いときは、その原因が認知機能によるものなのか、難聴によるものなのか、区別が困難なケースも少なくないようです。
そこでまず、自身の聴力がどのくらいのものであるのか、難聴の程度について確認を行い、適切な対応を行うための受診の啓発が必要だと考えますが、御所見をお伺いします。
難聴を補助する器具の一つとして補聴器がありますが、近年耳の周辺の軟骨の振動を通じて音が聞こえる軟骨伝導を応用したイヤホンの開発、販売が進んでおります。人が音を聞く経路は、これまで空気を通じて聞こえる気導と骨を振動させて聞く骨伝導しか知られていませんでしたが、聴覚医学が専門で、奈良県立医科大学の2004年当時、同大学教授であった細井学長が、第3の聴覚経路である軟骨伝導を世界で初めて発見しました。耳穴の周囲にある軟骨の振動によって、外耳道の内部に音源が生まれる。この原理を応用した軟骨伝導ヘッドホンが2022年に販売され、昨年には集音器とセットとなった窓口用イヤホンも開発されました。軟骨伝導イヤホンは、耳に軽く当てるだけで利用でき、骨伝導とは異なり、骨を圧迫することがないため、装着時の痛みはほとんどなく、通常のイヤホンのように耳穴を塞がない上、左右のイヤホンの音量を個別で調整でき、片耳だけでも使えます。また、イヤホンは、集音器とセットになっている上、雑音を取り除く機能があり、音漏れもなく、小さな声もはっきりと聞くことができます。このため、大声で話すことによって、個人情報を周囲に聞かれるリスクを減らすことができ、難聴者のプライバシーの保護にもつながります。そして、イヤホンには、穴や凹凸がなく、耳穴の中に挿入することもないため、衛生的に使用することができます。これまで公共の場において見えづらさに対しては老眼鏡や拡大鏡などの配慮がありました。しかし、聞こえづらさをサポートする手段はあまり見受けられませんでしたが、耳が聞こえにくい来庁者に配慮するため、保険・年金課の窓口などに耳の軟骨を振動させて音を伝える軟骨伝導イヤホンを相談窓口に設置する自治体や金融機関が増えているようです。導入された自治体は、これまで耳が聞こえにくい人に対して、大声や筆談で対応していたが、軟骨伝導イヤホンの導入により、これまでより円滑にコミュニケーションを取れるようになったとあります。
そこで、新居浜市におきましても、福祉関係の相談窓口などにこの軟骨伝導を応用したイヤホンを導入してみてはどうかと考えますが、御所見を伺います。
次に、この軟骨伝導イヤホンを含む補聴器購入の助成についてでございます。
新居浜市では、県と連携して、軽度、中等度の難聴児を対象に助成が行われていますが、これは子供たちにとって成長期における言語能力の健全な発達やコミュニケーション力の向上を図るものとされています。コミュニケーションにつきましては、補聴器をしている方が装着の煩わしさからか、補聴器をつけないまま外出し、会話が聞こえづらくてお互いに嫌な思いをしているような場面も見られます。近年は、就労年齢も高齢化が進み、難聴を抱えながらも就労の必要がある方も増加すると考えられ、補聴器等の使用の必要度が増してきます。
そこで、まずは就労していることや低所得などを条件といたしまして、補聴器購入の補助を検討してはどうかと考えます。さきに申しました聴力の検査により、軽度、中等度の難聴の方の人数把握と併せて、実施対象条件の検討、実施の御検討をいただければと考えますが、御所見をお伺いします。
(福祉部長答弁)
○福祉部長(久枝庄三)(登壇) 聞こえの補助についてお答えいたします。
まず、聴力についての受診の啓発についてでございます。
高齢者の話しかけに対する反応の低下が、認知機能によるものなのか、難聴によるものなのかを判断することは重要で、早期に聴力検査を受診することで難聴の程度を把握し、治療や補聴器による対策によって認知症リスクを低下させる効果があると認識いたしております。
今後におきましては、高齢者が御自身の健康状態に加えて聴力についても積極的に検査を受けるよう、周知啓発を図ってまいります。
次に、福祉関係の相談窓口等に軟骨伝導イヤホンを導入することについてでございます。
軟骨伝導イヤホンは、窓口対応等に効果があると認識いたしており、その導入につきましては、他自治体等の事例を参考に研究してまいりたいと考えておりますが、本市では本庁舎1階の福祉部4か所と市民課の窓口に聞こえが困難な方への対応用にタブレット端末を設置しております。発声すると、タブレット端末の画面に文字として表示され、意思の疎通が可能となるもので、今後も引き続きタブレット端末を有効活用し、難聴の方への円滑な応対とプライバシー保護を図ってまいります。
次に、就労されていることや低所得等を条件としての補聴器導入の補助制度検討についてでございます。
高齢者にとって聞こえの問題は加齢に伴って誰にでも起こり得るものであり、現状において法令等の裏づけがない65歳以上の高齢者の聴力検査の実施はできないことから、軽度、中等度の難聴高齢者の人数の把握は困難でございます。
また、就労していることや低所得等の条件づけの下、補聴器購入に係る新たな助成制度を設けることにつきましても、高齢者の3分の1が助成対象者とも言われます加齢性難聴の方の人数の面から見ましてもその財源確保は困難であり、実施されている他自治体につきましても対象条件や補助額について異なる考え方がされておりますことから、一律の基準を用いた国による制度化が望ましいのではないかと考えております。
今後におきましても、国、県及び他市の動向を注視しながら、その公費助成につきまして慎重に見極める必要があると考えております。
(再質問)
○9番(黒田真徳)(登壇) ありがとうございました。引き続きの検討をよろしくお願いいたします。