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(質問)
○ では次に、少子高齢化の改善のための子供への取組について質問いたします。
まずは、包括的性教育について質問いたします。
様々な支援策や対策などが行われても、なお歯止めが利かなくなっている少子化問題。新居浜市でも1人の女性が一生の間に出産する子供の人数を表す合計特殊出生率も、ついこの間まで四国1位だったのが、今回愛媛で3位、四国で6位と一気に下がってしまっているようです。
その反面、若い子供たちの妊娠問題や性被害が深刻化しています。ここ数年、減少傾向が見られていた人工妊娠中絶件数ですが、令和5年度はその傾向が逆転し、再び増加に転じていることが母体保護関連の統計により分かっています。この増加の背景には、特に若年層の中絶件数の増加が関係していると考えられ、20歳未満の中絶件数の増加が顕著です。20歳未満で見ると、特に19歳の中絶件数が最多、次いで18歳と続くようです。また、20歳から24歳及び25歳から29歳の層における中絶件数の増加も目立っています。
このような若年層の妊娠、中絶の背景には、妊娠に対する教育や避妊方法の普及がまだ不十分であること、そのような教育へのアクセスの問題が依然として存在していること、そしてサポート体制の整備の必要性が考えられるそうです。少子化で皆さんが対策を講じられているその傍ら、こうして新しく宿った命、そして自分の心や体を傷つける選択をしている人がいるということ、本当に心が痛みます。
包括的性教育とは、体や生殖の仕組みだけではなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等、幸福など幅広いテーマを含む教育のことで、まさに子供たちが直面している前述の問題の解決の糸口となり得る取組ではないかと考えられます。
愛媛県の宇和島市では、こころまじわうプロジェクトと呼ばれる包括的性教育によって、性を正しく理解するための取組が2020年度から行われています。それぞれの学年に合ったテーマで、産婦人科医や助産師など、専門家の講話プラス学級担任主導で行われる話合い中心の学級活動が、宇和島市内の全中学校、全学年で行われています。1年生では、思春期の心と体の変化についてなどを保健体育の学習とも関連づけながら、外部講師の講話から科学的に学びます。誤った性情報から抱いていた性へのマイナスイメージが、正確な情報を学ぶ中で、大切なこととして捉えられるようになるそうです。そして、学活では、性的いじめや性暴力についてみんなで話し合うそうです。2年生では、助産師さんから科学的に正確な情報として受精や妊娠、誕生についての講話を聞いた上で、学活では、性への関心が高まるのは当たり前。だけど、自分だけではなく、相手のことも大切にするには、性の行動においても同意が大切だということを考えます。3年生では、産婦人科の先生から避妊や中絶、性感染症など、妊娠、出産に付随するトラブルなどについての講話を聞き、学活では、デートDVについて話し合うそうです。4年前から宇和島の全中学校で始まったこの取組。2021年度からは小学校にも広がっているそうです。講話を聞くだけの講座ではなく、学級担任の先生たちも授業に取り組むことで、先生たちも子供たちと一緒に性について考え、学ぶことができる講座になっているそうで、その結果、下ネタのように面白半分で性のことを話すのではなく、正確な情報を基に、性のことを先生やお友達と話すことは大切なことなんだというように、子供たちの性への意識も変わってきているそうです。性的なことで悩んだときにも、一人で悩まず、誰かに相談してもいいんだと思ってほしい、外部講師も学級担任も関わり、学校ぐるみ、地域ぐるみで取り組むことで、相談できる大人、そして相談できる場所が増えていくことにつながっていきます。
また、性被害に関しても、令和5年3月30日に出された性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針では、性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる行為であり、決して許されない。相手の同意のない性的な行為は、性暴力であるなどの社会認識を社会全体で共有し、取組を強化していくとして、令和5年度から令和7年度まで、さらなる集中強化期間として取り組まれている最中です。加害者がいなければ、被害者は生まれません。幼少期からの包括的性教育に取り組むことが、加害者も被害者もつくらない、幸せな行動選択ができるための性の学びにつながります。
東日本大震災や能登半島地震の際も、性被害に遭われた方、性被害の恐怖におびえながら過ごされていた方が、私たちの想像以上にいらっしゃったと実際に現地にて支援活動をされた方からその現状についてお話を聞かせていただき、報道されていない現実に本当に愕然としたと同時に憤りを感じました。南海トラフ巨大地震への備えが急がれる今、自然災害自体を防ぐことはできませんが、それに伴うこのような被害は防ぐことができます。いいえ、必ず防がなければいけません。防災の観点からも、包括的性教育の必要性をこれまで以上にひしひしと感じております。
このような社会の大きな変化に伴い、子供たち自身の日常も大きく変化し、そのことから、子供たちが学生時代に直面する悩みやトラブルも保護者の学生時代とは大きく変化しています。まずは、ここについて保護者が学ぶこと、今の時代の当たり前を大人が知ることもとても大事なことだと宇和島のこのプロジェクトの中心で活動されている産婦人科の先生から伺いました。この先生たちが、宇和島市以外の小中学校にも出向き、思春期教室を開催されたり、大人に向けての学習会を開催されているほか、お隣の西条市では、保護者から学校に働きかけて、性教育の取組を実現させていたりと、愛媛県内でも広がりを見せている包括的性教育。
そこで、質問です。
新居浜の出生数や合計特殊出生率が下がった要因は、どのように分析されていますか。
それに対して、どのような対策を講じられていますか。
新居浜の若年層の妊娠問題や性被害など、性に関する問題の現状はどのようになっていますか。また、それらの対策として、どのような取組が行われていますか。
現在、新居浜では、子供たちに向けて、どのような性教育や性の啓発が行われていますか。大人に向けた取組は何かありますか。
以上、よろしくお願いいたします。
(教育長答弁)
○教育長(高橋良光)(登壇) 少子高齢化の改善のための子供への取組についてお答えいたします。
包括的性教育についてでございます。
まず、子供たちに向けた啓発につきましては、小中学校において、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じた性教育を行っております。本市独自の事業として、性教育の基盤となるみんなで子育て地域の絆「いのちの授業」を行っております。この事業の中で、小学校では、誕生学プログラムにより、自尊感情を育み、命の大切さや命のつながりの尊さを学び、中学校では、いのちの授業として、赤ちゃんやその母親と触れ合う機会を提供することにより、赤ちゃんが持つ周りの人たちを幸せにする力を体感してもらうとともに、命や子供を育てていくことの大切さや喜び、また人に対する思いやりの心を学ぶ取組を実施しております。
次に、大人に向けた取組につきましては、いのちの授業を保護者参観日に実施するほか、保健だよりや学校だより等で保護者の方にも学校における性教育の取組を知っていただくことで、啓発にも努めております。
なお、御案内のありました宇和島市でのプロジェクトは、性を正しく理解する上で参考になると考えますことから、先進事例として情報収集に努めてまいりたいと考えております。
(福祉部こども局長答弁)
○福祉部こども局長(沢田友子)(登壇) 本市の出生数や合計特殊出生率の低下の要因と対策についてお答えいたします。
本市の出生数や合計特殊出生率の低下につきましては、様々な要因が影響していると考えております。多様な生き方を選択する人が増えていることや、若い世代の経済的な不安定さや出会いの機会の減少、仕事と子育ての両立の難しさ、子育ての孤立感や負担感、子育てや教育に係る費用負担など、社会全体で取り組むべき課題が山積しているのが現状であると分析しております。
これらの対策として、不妊治療に関する助成対象の拡大や子育て相談や一時預かりにも対応できる子育て支援拠点施設の大型ショッピングモール内への設置、こども家庭センターすまいるステーションでの専門的な資格やスキルを持った職員のチーム体制によるサポートなどに取り組んでいるところでございます。
一方で、子ども・子育て支援事業計画策定に向けて、高校生からの意見聴取を行ったところ、子供を育てることが大変そうだとの回答が非常に多く、楽しそうだという回答を大きく上回っておりました。
このことからも、子育て支援制度や将来に向けた人生設計に関わる情報などは、子育て中の世代だけに発信すればよいのではなく、これから大人になる子供たちにも適切に知ってもらうための取組も必要ではないかと考えております。
次に、本市の若年層の妊娠問題や性被害など、性に関する問題の現状についてでございます。
近年、本市の窓口においては、性被害に関する相談実績はありませんが、10代で母子健康手帳を発行する事例もあります。10代の若年妊婦に見られる問題としては、身体的な未熟さから、妊娠、出産すること自体が母体や胎児に大きなリスクとなることで、妊娠中のきめ細かな健康管理が必要であることや妊娠届出時に未婚であるなど、社会的基盤が脆弱であることなどがあります。
それらに対する取組といたしましては、母子健康手帳発行時の保健師等による面談やその後も電話相談や家庭訪問等を行い、妊婦の心身の状態や養育環境を確認し、状況に応じた情報提供や関係機関へのコーディネートにより、安心して出産、子育てできるよう支援しております。
また、予防教育として、市内の高校3年生を対象に独り立ちサポートブックを配布し、妊娠や性感染症などの性に関する正しい知識の普及啓発や市内高校でのプレコンセプションケアに関する出前講座を実施いたしております。
(再質問)
○4番(野田明里)(登壇) ありがとうございます。
徳島県阿南市には、DV防止の啓発活動や性教育を行う大変ユニークな団体がいらっしゃいます。パープルシードあなんというその団体。DVのない地域づくりを目指して、自治体と連携を図りながらDVについての意識を高めたり、多くの人に知ってもらうための講演会を行ったり、阿南市内の中学校でデートDV防止セミナーや講演会を行われているのですが、その団体のキャッチフレーズが、男たちの挑戦、そう、中心メンバーが男性、御本人たちの言葉をそのままお借りするとおっちゃんたちなんです。女性の問題と捉えられがちなDVの防止策を、男性目線で考え、みんなの意識、とりわけ男性の意識が変わらなければ、DV、性被害はなくならないとの見解から、男性が加害者とならない地域社会づくりを目指されています。新居浜にもこのパープルシードあなんさんの取組に興味を持ってくださっている男性、おっちゃんたちがいらっしゃいます。先ほどお話ししてくださいました教育、科学的に正しい情報を知るということも大切だと思いますし、男性がもっと取り組めるような、そのような取組も必要かと思います。新居浜市もぜひこのような民間の方、いろいろな取組と連携していただきながら、子供たちに、責任ある大人が、愛を持って正しい情報を教える機会をつくっていただければと思います。